誰もが思いつきそうで、思いつかなかったことを見つけたい
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福島
澤邊さんは創業当時、WEBサイトやデジタル広告の制作をされていたそうですが、こうして現在のようにテクノロジーで新たな体験を創造するクリエイティブ事業に舵を切ったきっかけは何だったのでしょう?
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澤邊
起業したきっかけはインターネットに出会ったからで。これなら自分の境遇、ハンデも乗り越えられる。「なんて自由なんだ!」と思ったのが原点です。WEB制作をやっていきたかったわけではなく、もともと街づくりに興味があり、クリエイティブで京都を盛り上げていきたいなと。自分たちの表現やアイデアで人が来て街が潤うとか、地域企業のブランディングをするとか、だからWEBサイトは手段でしかなかった。そうして活動を続けていく中で2010年代に入りスマホも登場して、より自由度の高い表現ができるようになった。もともと技術志向だったこともあり、WEBだけでなくいろんなテクノロジーを活かして、新たな体験を作っていこうという⽅向に興味が移っていったというわけです。
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福島
もともとはそういうマインドだったんですね。澤邊さんは創業以来、「それっておもしろいの?」という信条があるそうですが、そういう活動の指針というか、ジャッジワードってニーズあるんじゃないかと思っているんです。とてもいいフレーズですよね。
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澤邊
結局、何のために働くのかに尽きると思うんです。仕事は半分趣味みたいなものだと思っていて、極端に言えば壮大な暇つぶしというか。自分がどうせ時間をかけるなら意味のあること、おもしろいことをしたいなと。自分がワクワクできることをこの会社で突き詰めていこうと。よく誤解されるんですけど、ギャグ的にとか表層的なおもしろさではなく、心持ちというか姿勢として楽しめているかどうか、が大事だと思っています。
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吉永
私も最近、⼀周回って楽しいかどうかを重要視しようと思うようになりました。業界が⻑くなり、だんだん知識が付いてくると、課題解決できているのか、差別化できているのかと戦略を⽴てた結果、「これで誰が幸せになるんだろう?」と思うような楽しくないアウトプットになっていたりするので、しっかり問いかけないといけないと感じますね。
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服部
私も学生時代から、自分がワクワクして、おもしろいと思えるものを作るように心がけていましたが、澤邊さんが「おもしろいな」と感じるのはどんなことですか?
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澤邊
「誰もが思いつきそうだけど思いついてなかったこと」を発見したらめっちゃ嬉しいですね。そんな難しいことじゃなくて。例えば最近印象的だったのは、あるヨーロッパの企業が開発したソーラーパネル。普通は斜め45度に倒して南に向いてますよね。置こうと思ったら広いスペースも必要になる。ところがその会社はそこのホワイトボードみたいに両面につけて東と西に向くように立てるんです。正午までは東の面、日没までは西の面で太陽光を受けるので一日中発電できる。これ、斜め置きと効率は同様なんですって。壁みたいだから場所をとらないし、日陰にならないから農園と共存できる。ただ縦に置いただけなのに賢いなと。そういうのを見つけたいなと思う。
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服部
当たり前を当たり前と思わずに疑問を持つこと、が大切なんでしょうね。
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澤邊
本当にそう。つい最近知った商品で、これもおもしろいと思ったのは「Liquid Death」。カリフォルニアのスタートアップ企業が売り出した単なる水なんだけど、缶のパッケージがドクロでなんかおしゃれ。お酒を飲まない若者向けの商品なんですが、いかにも水だとダサいっていうインサイトがあったんでしょうね。みんなの前で飲んでも「アイツ、水かよ」ってならない。まぁこれだけ世に知れたら、もうみんなにバレるでしょうけど。まあ、そこに気づいたアイデアが素晴らしい。ふつう水といったらペットボトルとか、天然水っぽいイメージで考えるのが当たり前じゃないですか。
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吉永
確かに。⾔われたら分かる気持ちですが、気づかないですね。
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澤邊
我々がやろうとしているクリエイティブも、たぶんちょっとした気づきなんですよね。おもしろいと思えるかとか。そういう気づきがあると楽しくなってくる。誰もが思いつかなそうなことは、よほど技術がすごいとかになるのでそれは難しい。でも誰もが思いつきそうなところに、まだ答えはいっぱいあるんじゃないかな。
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福島
なるほど。僕、数学が好きで。息子といっしょに図形の問題をよく解いているんですが、補助線を引いたら解き方が分かるんですよね。これ、おもしろいな!と。それで、自分の中で「補助線のような人になりたい」というテーマが出てきました。もしかしたら世の中にたくさんおもしろいことはあるけど、何か一本線を引いてあげると、パッとみんなが気づくとか。それがクリエイティブなのかなと思ったりしています。
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澤邊
そういう気づき、きっかけを与えるっていうのはクリエイティブの役割としてはありますよね。