ブランディング
2023.10.16
CPAが高騰したら?ブランド戦略×指名検索シフトのすすめ
- 目次
- CPAが高騰?A/Bテスト×PDCA一辺倒の限界
- CPA高騰の原因①競合の参入によるレッドオーシャン化
- CPA高騰の原因②競合ブランドのブランド投資
- CPA高騰のその先へ
- ブランド戦略×指名検索シフトのすすめ
- 最後に
この記事に訪れていただき、ありがとうございます。ASAKOのストラテジックプランニングディレクター、羽田康祐(ハダ コウスケ)と申します。
この記事にたどり着いたあなたなら、何らかの理由で運用型WEB広告のCPA(Cost Per Action=顧客獲得単価)高騰に悩まされているのではないでしょうか?あるいは、CPAの改善について関心をお持ちのことでしょう。
CPAが高騰すると、多くの場合CPA=CPC/CVRに分解し、
- WEB広告のCPC(Cost Per Click=クリック単価)を改善できないか?
- ランディングページのCVR(Conversion Rate=コンバージョンレート)を改善できないか?
を考え、A/Bテスト×PDCAを駆使して、打開策を模索していくと思います。しかし最近では、
- さんざんA/Bテストを繰り返しても、AもBも両方ダメ
- CやDを投入しても全然ダメ
という状況に陥ってしまい「A/Bテスト×PDCA一辺倒」の方法論に限界を感じているのではないでしょうか?
今回の記事では、広告代理店と外資系コンサルティングファームの両方のキャリアを持つ筆者が「A/Bテスト×PDCA一辺倒」の限界と「ブランド戦略×指名検索シフト」について丁寧な解説を目指します。
CPAが高騰?A/Bテスト×PDCA一辺倒の限界
まずは「A/Bテスト×PDCA一辺倒の限界」についておはなしします。
「A/Bテスト×PDCA」を効果的に機能させるための前提は、
- 施策の結果の良し悪しによって、短期的に、かつ柔軟に次の施策を変えることができること
です。
しかしこの前提は、組織の視野が「短期的に、かつ柔軟に変えることができる施策のみ」に限定されてしまうリスクをはらみます。
別の言い方をすれば「木を見て森を見ず」という状態になり、PDCAサイクルの外側にある「大きな構図の変化」を見逃してしまうことがあります。その結果、事業の致命傷になることすらあるのです。
このことをわかりやすく理解するために、転職サイトを例に「CPA高騰」の背後にある「大きな構図の変化」について説明していきましょう。
ぜひ、あなたが「転職サイトA」のマーケティング担当者だったと仮定して読み進めてみてください。
CPA高騰の原因①競合の参入によるレッドオーシャン化
まずは、以下のGoogle トレンドのグラフをご覧ください。ある時期における5年間の【転職サイト】のキーワードの検索数推移です。
このグラフを見ると【転職サイト】のキーワード検索数推移は、ほぼ横ばいであることがわかります。このことを踏まえた上で、次のグラフ2をご覧ください。
【転職サイト】の検索数推移がほぼ横ばいにもかかわらず【転職サイト】というキーワードでWEB広告に参入している企業が3倍に増えていることがわかります(5社→15社)。その結果、入札競争が激しくなり、単純計算するとCPAも3倍に高騰することになります。
こうなってしまうと、いくら「A/Bテスト×PDCA」で小手先の改善を続けても「競合の参入」という「大きな構図の変化」によって、1社当たりの「分け前」が大きく減ってしまっているので改善が追い付かず、CPAは高騰することになります。
CPA高騰の原因②競合ブランドのブランド投資
続いて、以下のグラフ3をご覧ください。
ある一定の時期を境に、【転職サイト】の検索数が大きく減少していることがわかります。こうなってしまうと「転職サイトA」のマーケティング担当者であるあなたは、かなり厳しい状況に立たされることになります。
なぜなら、競合ブランドが3倍に増えたことで入札競争が激しくなり、さらに【転職サイト】の検索数が大きく減少していることで、市場が縮小しているからです。
もはやこの段階にくると「A/Bテスト×PDCA」も焼け石に水の状態となり、「にっちもさっちもいかない」という状態に陥ります。
では、なぜ【転職サイト】の検索数が大きく減少したのでしょうか?次のグラフ4をご覧ください。
グラフ4の赤い折れ線は、競合である【転職サイトB】の指名検索数の推移です。
このグラフを見ると【転職サイトB】の指名検索数の増加に伴って【転職サイト】というカテゴリーキーワードの検索数が減少していることがわかります。これはいったい、何を意味しているのでしょうか?
実はこの時期に、転職サイトBはブランド認知度の向上を目的に、TVCMを含めた大きなブランド投資を始めています。その結果、少なくない転職志望者が【転職サイト】と検索せずに【転職サイトB】の指名検索にシフトしたのです。
【転職サイトB】と指名検索した人は、そのほとんどが転職サイトBのサイトに直行することになります。
その結果【転職サイト】と検索する人は大きく減少し、たとえあなたが【転職サイト】検索者に向けて運用型広告の刈り取り施策に注力したとしても、思うような成果が出ず、さらなるCPAの高騰を招いてしまうのです。
この傾向は、転職サイトだけでなく、BtoB業界でも見られます。以下のグラフ5は【SFA】と【SFAベンダーA】の検索数推移です。
SFA(営業支援ツール)業界でも【SFAベンダーA】の指名検索数の増加に従って、【SFA】の検索数が減少していることがわかります。
少なくないSFA検討者が【SFA】と検索せずに【SFAベンダーA】という指名検索にシフトしたのです。
CPA高騰のその先へ
ここまで、転職サイト&SFAツールの事例で「A/Bテスト×PDCA」の限界を見てきました。
「転職サイト」「SFAツール」の2つの事例から示唆されるのは、「こうすれば、こうなる」という、予測可能で数値管理がしやすい環境の内側だけでPDCAサイクルを回していくことの限界です。
「A/Bテスト×PDCA」の高速回転で急成長を遂げてきた企業は、これまでは市場が拡大していたため、「想定していたコンバージョンは確保できたか」「CPAは基準以下で運用できたか?」といった戦術面での指標を管理し、PDCAサイクルを回していれば、それなりの成果を出せました。
しかし「競合の参入による分け前の減少」あるいは「競合のブランド投資によるカテゴリー検索数の減少」という「大きな構図の変化」にさられると、小手先の地道なPDCAサイクルでは到底追い付かず、いたずらに現場の疲弊を招くことになります。
筆者はこれまで、数多くのブランドを見てきましたが「毎月、数千万円ものWEB広告を運用しているのに、世の中全体から見たブランド認知率は1桁%台」というブランドはざらにあります。
このようなブランドは、競合ブランドが大きなブランド投資を展開してくると、瞬く間に見込み客をさらわれ、CPAが悪化する傾向があります。
戦術レベルの小さな改善の積み重ねは、「大きな構図の変化」に対応できないのです。
「大きな構図の変化」に立ち向かっていくには、より「大きな視野」の戦略判断が必要になります。「目先の費用対効果」から「長期的な投資回収」にシフトしていく必要があるのです。
ブランド戦略×指名検索シフトのすすめ
どのマーケティング担当者も、究極の悲願は「比較されずに、指名買いをし続けてもらうこと」ではないでしょうか?
そのために必要なのが、ブランド認知率を高め、指名で検索してもらえる状態を創り上げていく「ブランド戦略」です。
「ブランド戦略」というと、つい一足飛びに「TVCMによるブランド認知率の向上」や「ブランドイメージの向上」に目が向きがちですが、その前にやるべきことが3つあります。
1. ブランド戦略に対する社内気運の醸成
ブランド戦略が投資を伴うビジネス活動である以上、社内気運の醸成は必要不可欠です。
しかし、これまで「A/Bテスト×PDCA」一辺倒で成長してきた企業は「こうすれば、こうなる」という、比較的予測可能で数値管理がしやすい環境の中でPDCAサイクルを回してきました。そのため「大きな構図」で状況を捉え直し「長期的な投資回収」を考える組織風土がありません。
そこで、ASAKOがよくご提案するのが、100社以上の診断実績を持つブランド診断ソリューション「ASAKO Brand 5BOX」です。
筆者の経験では、現場に近い社員の方は「大きな構図の変化」に危機感を抱いているにもかかわらず、上層部の方は自社を過大評価しており、組織の中で立脚点すら揃わず迷走している状況が数多く見受けられます。
しかし「ASAKO Brand 5BOX」でブランド診断を行うと、「競合ブランドと比べて、いかに自社ブランドのブランド認知率が低いのか」など、ブランド関連の指標が客観的数値として明らかになります。すると上層部の方と健全な危機感を共有でき、その解決策としてブランディングの決裁が下りやすくなります。
また、競合ブランドも含めて現状の数値が明らかになるので「自社はどこまでブランド認知率を伸ばすべきか?」など、ブランディングKPIについても建設的な議論ができるようにもなります。
2. ブランド戦略の立案
いざ社内の決裁が下りたら、続いてやるべきは「ブランド戦略の立案」です。
ブランディングは極めて曖昧な概念であることから、さまさまな解釈が存在します。そして、あなたのチームメンバーが個別に解釈をしてしまえば、ブランディングは一貫性を失い、散発的になり、大きな投資を伴うにもかかわらず「砂漠に水をまいて何も残らなかった」という悲惨な状態に陥りがちです。
そこでASAKOでは、クライアントと共創しながらブランド戦略を策定していく「ASAKO Brand PRISM」というソリューションを提案しています。
「ASAKO Brand PRISM」は、PEST分析や3C分析から始まり、ペルソナ設定、ブランド提供価値の再定義、パーパスの策定、ブランドパーソナリティの設定、ポジショニングの設定など、ブランドへの感情移入を促進し、指名買いにつながる要素を規定していく戦略策定ソリューションです。クライアントからは、
- 進め方や意見の引き出し方が非常にうまく、スムーズに作業を進めることができました。こういったところは、社内の人間だけだとどうにもできない点だと感じたのでありがたかったです
- ブランドに関してかなり深い部分を議論する機会となったので、勉強になりました。
各チームで意見が異なったときに、うまく集約できるようにリードされていたので、進行がスムーズだった
などのお褒めの言葉をいただいています。
3. 地方でのテストマーケティング
ブランディング投資となると、数億円のTVCM費用がかかる…。あなたはそう感じて、二の足を踏んではいないでしょうか?
昨今のビジネスは「小さく初めて、大きく育てる」が鉄則です。
まずはいきなり全国展開せずに、地方からTVCMの効果を試すことで、初期費用はグッと抑えられます。
弊社では、TVCM1本1本の広告効果を可視化し、広告効果の最大化を図る「A-SPiCA」というTVCM効果観測ダッシュボードをご用意しています。
地方でのテスト×A-SPiCAを組み合わせることで、ブランディング投資も「小さく初めて、大きく育てる」ことができるのです。
最後に
いざ、ブランド戦略を策定しようとしても、
- 社内の機運が作れない
- どのような手順で検討していけばいいかがわからない
- 何について検討していいかがわからない
- 一つ一つ検討項目に対して、どう考えていいかがわからない
- どのくらいの投資が必要かがわからない
などの状況に陥りがちです。ぜひ、そのようなときはお気軽に弊社にご相談ください。ブランディングのフレームワークや始め方・進め方、事例などを紹介させていただきます。
また、ASAKO Brand 5BOX、ASAKO Brand PRISM、A-SPiCAのソリューション資料はhttps://www.asakonet.co.jp/download/からダウンロードできます。
※本資料に掲載した当社商標以外の会社名および製品・サービス名、サービスマーク、商標は、各社が保有する商号、登録商標または商標(出願中含む)であり、それぞれを表示するためだけに引用しています。
- 所属等は執筆当時のもので、現在とは異なる場合があります。
- また記事中の技術、手法等については、今後の技術の進展、外部環境の変化等によっては、実情と合致しない場合があります。
- 各記事における最新の動向につきましては、当社までぜひお問い合わせください。
著者プロフィール
プロフェッショナルズストラテジックプランニングディレクター羽田 康祐(はだ こうすけ)
この人の書いた記事
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「出典:朝日広告社「アスノミカタ」●年●月●日公開記事」
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