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2024.12.17
マーケッター必見!「ID統合による顧客データ戦略」を概念として理解する
はじめに
現代のビジネス環境において、「顧客データ統合」や「IDを軸としたデータ活用」という言葉を耳にする機会が増えているかと思います。これらの概念は現代のビジネス環境において顧客理解を深め、より良いサービスを提供するための重要な手段として注目されていますが、同時に、エンジニアリングの専門的な知識を持たないマーケッターにとってはやや理解しにくい領域でもあります。IDを軸にデータを統合するというプロセスには技術的な複雑さが含まれているため、「実際にどのようなメリットがあるのか?」「どう顧客戦略に役立つのか?」といった点がイメージしにくいことも少なくないでしょう。
このコラムを通じて、まずは顧客データ統合を行う本質的な意義をご理解いただければ幸いです。
1.目的
IDを軸とした顧客データ統合とは、異なるチャネルやプラットフォームで収集された顧客データを1つのIDに統合する一連のプロセスを指します。
これは日本政府が推進しているマイナンバー事業と類似した取り組みと言えます。マイナンバー事業では国民一人ひとりに割り当てられた個人番号を用いて、行政手続きの簡素化や社会保障、税務などの情報連携を実現する(国側のメリットとしては)行政の効率化によるコスト削減の側面が強い取り組みになります。
対して企業による顧客データ統合は、LTV(顧客生涯価値、Life Time Value)向上による売上拡大が最終的な目的となる取り組みです。LTV向上には、長期的に企業にとって価値のある(長期間にわたり継続的にサービスを享受してくれる)顧客を増やしていくことが命題になりますが、それには顧客一人ひとりに最適な体験をしてもらい信頼と愛着を得て、継続的にサービスを利用してもらう必要があり、顧客ごとの詳細な理解が求められます。そのために、ユニークなIDを用いて「属性」「行動」「心理」などの様々な「ヒト」に関わるデータを収集、統合します。
これは、「○〇さん(属性)は△△という意識(心理)で××を買った(行動)」といったようなデータを収集していくことになるため、顧客が企業(が展開するサービスや商品)に何を求めているのか(ベネフィット)を理解するための手段、と言い換えることができます。これをIDが付与された全ユーザを対象に行うことで、より顧客一人ひとりを正確に分析・理解することが可能になります。
- 目的 :LTV向上による売上拡大
- アプローチ:顧客一人ひとりが企業(のサービスや商品)に何を求めているかを理解する
- 手段 :異なるチャネルやプラットフォームで収集した顧客データを1つのIDに統合
2.背景
企業による顧客データ統合の動きが活発化した背景には、以下の3つ(ヒト、市場、技術)の変化が上げられます。
- ヒト:「ニーズや生活スタイルの多様化」
SNSの台頭とそれに伴うマスメディアの影響力減少、個々を尊重する社会への変化などにより生活者のニーズや生活スタイルは多様化しており、企業からの択一的で押し付け的なメッセージでは価値を感じづらくなっています。今の企業には、その多様化した生活者一人ひとりを理解し寄り沿う顧客体験・価値の提供が求められています。 - 市場:「顧客と直接接点を持てるビジネスモデルの台頭」
例えば、メーカー企業は流通の壁により顧客と直接接点を持つことができず、真の顧客ニーズを吸い上げることができずにいました。そんな中で新たなビジネスモデル(D2C/コミュニティなど)が台頭、メーカー企業でも直接自社製品を販売したり顧客と直接コミュニケーションを取ること、すなわち、より容易にかつ詳細に顧客ごとのデータを収集することが可能になりました。 - 技術:「データ処理・分析の民主化」
ビックデータ処理技術の発展やAI・機械学習並びに分析ツールの進化により、一部の専門特化したエンジニア/データサイエンティストを抱えていない一般の企業でも、高度なデータ処理・分析や予測モデリングが比較的簡単に実行可能になりました。
3.目指す姿
前述のとおり、生活者と企業がWin-Winの関係を構築し、結果としてLTVが向上する状態が顧客データ統合の最終的な目的になりますが、それを実現するにはいくつかの段階/ステップを踏む必要があります。
第一段階:データの蓄積
この段階では顧客理解(分析)のためのデータ収集が主なタスクとなります。データ収集のためにはサービスを継続的に利用してくれる顧客を増やす必要があり、会員登録促進や魅力あるサービス/コンテンツ作りも重要タスクとなります。
1.会員を増やす:魅力的な会員特典やサービスの提供による会員登録促進
2.利用を促す:コンテンツ/サービス拡充、特典の提供
3.データが集まる:会員の行動/意識データの蓄積
第二段階:顧客理解/One-to-Oneコミュニケーション
この段階では、蓄積されたデータを元に、顧客ごとの最適なアプローチを行うための分析から、その分析結果を踏まえて実際にパーソナライズされたメッセージングやオファーを展開するまでがタスクとなります。
4.顧客を理解する:顧客セグメンテーション/ジャーニーの可視化など
5. One-to-One:パーソナライズされたメッセージングやオファーの展開
顧客ごとの最適なアプローチができていれば、顧客からは愛着と信頼の獲得、さらなるサービス利用が期待でき、結果的にLTV向上が期待できるため、まずはこの第二段階の顧客ごとの最適なアプローチができている状態を目指すことが当面の目標となります。そのためには第一段階/第二段階のステップを継続的に繰り返し、データ蓄積や分析、サービス/コンテンツの拡充、メッセージングやオファーのトライ&エラーを繰り返す必要があります。
第三段階:その他の顧客データ活用
第一段階/第二段階まではどの業態/企業でも凡そ上記に述べたようなステップを踏みますが、この段階になると企業ごとの課題に即して活用方法や優先順位が異なっていきます。
下記に活用例を記載していますが、いずれも企業に貢献する顧客の十分な理解が必要になるため、ステップとしては第一・第二段階を経てから活用を検討していくのが一般的です。
おわりに
本コラムでは、顧客データ統合を行う本質的な意義をご理解いただくために、概念的な部分を解説しました。
弊社は、データ統合を行うための技術的な環境構築の支援のみでなく、プロジェクト策定~サービス/コンテンツ開発~分析~各種施策支援~顧客データ活用支援など、データ統合プロジェクトに関わる一連の業務をトータルでサポートが可能です。IDを活用したデータドリブンなマーケティングの実現をご希望の際は、ぜひ弊社までお問い合わせください。
※図1、2、3は、生成AIを部分的に使用して生成しました。
- 所属等は執筆当時のもので、現在とは異なる場合があります。
- また記事中の技術、手法等については、今後の技術の進展、外部環境の変化等によっては、実情と合致しない場合があります。
- 各記事における最新の動向につきましては、当社までぜひお問い合わせください。
著者プロフィール
プロフェッショナルズコンサルタント宍倉 潤 (ししくら じゅん)
この人の書いた記事
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