データサイエンス データ分析 機械学習 ウェルビーイング アクティブシニア デジタル 2024.04.17
【データ分析から探るシニア像】〜シニアの幸せとは︖〜

コロナ禍がシニア世代のデジタル化を加速させる
目次
はじめに
なぜ「シニアの幸福」を調べるのか
アンケート×機械学習から⾒た「シニアの幸福」
まとめ

はじめに

中野 拓馬(なかの・たくま) データソリューション部データアナリスト
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内⽥︓皆さまこんにちは︕ 朝⽇広告社データアナリストの内⽥です。
本記事は「データアナリストが挑むシニア層の探求」シリーズの第三弾となります。 今回掘り下げていくテーマは、 「データ分析から⾒た、シニアの幸せとは︖」 です︕
これまでと同様、シニアマーケティングの専⾨家である桐⼭と相談しながら、データ分析を進めていきます。

桐⼭ 忠介(きりやま・ただすけ) ストラテジックプランニング部部⻑ 専⾨領域はシニアマーケティング
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桐⼭︓桐⼭です。今回もどうぞよろしくお願いいたします︕

なぜ「シニアの幸福」を調べるのか

中野︓前々回は「デジタルシニア」の趣味志向について分析しましたが、今回は「シニアの幸福」について調べるのですね。なぜそのテーマを調べたのか、お伺いしてもいいですか︖

桐⼭︓はい。シニアに限らず、あるターゲットを理解するためには、そのターゲットが何を求めて⽇々活動しているのかを理解することがとても重要です。なぜその商品を買ったのか、なぜそのようなライフスタイルを送っているのか、そこにはマーケティングに役⽴つさまざまなヒントが存在しています。そして、この「なぜ」をとことん突き詰めていくと、結局のところ全て 「幸せになりたいから」という動機につながるのです。

中野︓全ては「幸せ」につながる……。分かる気がします。

桐⼭︓裏を返せば、「ターゲットがどんなときに幸せを感じるのか」を整理し、「その幸せのために商材がどのように役⽴てるのか」という観点で考えることによって、ターゲットの⼼を動かす施策を考えやすくなるのです。これがウェルビーイング・マーケティング(より良い⽣き⽅/幸福)と呼ばれるものです。

中野︓最近話題によく出るウェルビーイングとは、そういう意味だったのですね。

桐⼭︓そうです。「幸せを考える」というと、なんだかうさんくさい気もしますが(笑)、⼈間の究極的な⾏動原理を捉えるという意味で、かなり実践的な⼿法なのです。

中野︓なるほど。それで今回、シニアの幸福を調べるというテーマに⾄ったわけですね。

桐⼭︓はい。そこで、初回でも取り扱ったシニア層へのアンケート分析の結果から、何かヒントを得られないかと考え、中野さんに相談することにしたのです。

アンケート×機械学習から⾒た「シニアの幸福」

中野︓このシニアへ向けたアンケート分析では「あなたの現在の⽣活は幸せだと思いますか」という幸せ度合に関する設問と、趣味志向や考え⽅について尋ねた設問が複数あります。それでは最初のステップとして、 「決定⽊分析」 という分析⼿法を試してみましょうか。

桐⼭︓決定⽊分析について、簡単に説明をお願いします。

中野:そうですね……。例えば桐⼭さんは、下図のような性格診断や占いのようなものをやったことはありますでしょうか。

桐⼭︓ああ、こういうのよくありますよね。もちろんやったことはありますよ。

中野︓決定⽊分析とは、まさにこのようなフローチャートを作る分析なのです。つまり、質問を繰り返すことによって、傾向の似たグループに分類するという⼿法です。

桐⼭︓なるほど。そんな分析⽅法があるのですね。

中野︓はい。細かいところは実際の分析結果を⾒たほうが分かりやすいでしょう。

中野:上記が実際に決定⽊分析を実施し、その結果を⾒やすくまとめたものです。この分析では「あなたの現在の⽣活は幸せだと思いますか︖」という設問に対して、肯定的に答えたグループと否定的に答えたグループを、ほかの設問でどのような回答をしているかで分類したものです。

桐⼭:ええと、まだちょっとぴんと来ないのでもう少し詳しく教えてください。

中野:はい。ひとつひとつ確認していきますね。

中野:⼀番上に「現在の経済状況」という設問があり、この設問に対して「良い、やや良い」と回答した⼈は左に分岐します。

桐⼭:お⾦に余裕があるグループということですね。

中野:そうです。次に「まだまだ⼈⽣これからだと思いますか」という設問に対して「そう思う」と回答した⼈は⼀番左側に集められます。

桐⼭:お⾦に余裕があり、今後の⼈⽣にかなり前向きな⼈のグループですね。⼀番下にn=66とあるので、そのような⼈が66⼈いたのですね。

中野:はい。その66⼈の「現在幸せか」という設問の回答を調べると、最も多かった回答が「そう思う」で、割合に直すと60.6%だったというのがこの分析結果の⾒⽅となります。

桐⼭:つまりお⾦に余裕があり、今後の⼈⽣にかなり前向きだと、幸せだと回答する傾向が⾼いということですね。

中野:その通りです。

桐⼭:なるほど。だんだん⾒⽅が分かってきました。ということは、⼀番右側のグループは、「経済状況」が良くなく、「家族や仲間との時間が⼀番幸せ」ではないと回答した⼈たちなのですね。

中野:はい。

桐⼭:そして、そのグループは143⼈いて、現在幸せかという質問に対しては「どちらでもない」と回答した⼈が最も多く、その割合は39.9%だったということですね。これはどのように解釈すればよいのですか︖

中野:今回は簡潔にするために省略していますが、実は今回の場合は、右側にいけばいくほど、「幸せではない」と回答した⼈がどんどん増えていくことが分かっています。つまり、⼀番右側の⼈たちは幸福度が⼀番低いグループということになります。

桐⼭:その割には、「現在幸せと思わない」ではなく、「どちらでもない」が⼀番多い回答だったのはなぜでしょうか。

中野:それは調査対象者に理由があると考えています。今回の調査対象者はつまるところ、「インターネットでアンケート調査に協⼒するくらいには余裕のあるシニア」なので、そもそもこの質問に対して「幸せではない」と回答する⼈がそれほど多くなかったのです。

桐⼭:なるほど、本当に不幸な⼈は調査に協⼒する余裕がないのであまり現れないということですね。そして今回の調査対象者の中では、「どちらでもない」と回答している時点で、あまり幸福度が⾼くないことを意味していると。

中野:そうなります。したがって繰り返しになりますが、 「どちらでもない」が最も多い⼀番右側のグループは、最も幸せを感じていないグループとなります。なお、今回の結果では右側ほど幸福度が低いグループ、左側ほど幸福度が⾼いグループということが分かります。

中野:すなわち今回の結果をまとめると、現在幸せと感じている⼈たちは「経済状況が良い」と感じていて、なおかつ「まだまだ⼈⽣これから」と思っている⼈たちだということが分かりました。また、経済状況が良くないと感じていても、「家族や仲間との時間が⼀番幸せ」と感じているかどうかで幸福度合いが変わることも分かりました。

桐⼭:お⾦があるかどうかが幸せを分けるというのは、かなり現実的な回答ですね(笑)。

中野:そうですね(笑)。ただ決定⽊分析の注意点として、「因果関係を⽰しているわけではない」ということがあります。 つまり今回は「経済状況が良いと回答したグループは幸福度合いも⾼いグループだった」ということは分かりますが、「経済状況が良くなれば幸せになれる」かどうかは分かりません。もしかしたら「幸せと回答する⼈は楽観的なので、いくら経済状況が悪くても、それを悪いと感じない」というケースもあるかもしれません。

桐⼭:因果関係があるかどうかは、また別の検証が必要ということですね。

中野:はい。また、決定⽊分析は解釈はしやすい一方、それほど精度の良い分析ではないので、その点も注意が必要です。あくまで今回の調査対象者においては、「経済状況の良さ」、「これからの⼈⽣への前向きさ」、「家族や友⼈との時間」の3点が現在の幸福度合いに影響している可能性がある、と⼤きく捉えるくらいがちょうどいいと考えられます。

まとめ

桐⼭:ありがとうございます。いろいろと仮説のヒントが⾒えてきました。ここからは、この幸福度を⽰唆する3点を意識しながら、狙うシニアのクラスタや商材によって前回のように⽂脈に合わせた施策を考えると良さそうです。

中野:はい。分析においても、今度は「⼈⽣への前向きさ」が⾼い⼈は何が違うのか、さらに決定⽊分析をしたり、あるいは決定⽊分析以外の分析⼿法で幸せの要因を探るなど、まだまだできることはたくさんあります。このあたりは引き続き検証したいと考えています。

桐⼭︓朝⽇広告社では、⾃社調査データを基にシニア層への適切なマーケティング⽀援ができる環境をご⽤意しております。
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著者プロフィール

プロフェッショナルズ中野 拓馬(なかの たくま)

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