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2023.01.20
コロナ禍がシニア世代のデジタル化を加速させる
シニアマーケティングとは、シニア世代にターゲットを絞ったマーケティング手法です。
シニア世代は長い時間を経験しているため、最も十把一絡げにはできない世代ともいえるでしょう。それゆえ、「シニア世代を理解しようにもなかなかわからない」「あの手この手を尽くしてもなかなか成功に導けない」といった経験も決して少なくないはずです。
そんなシニア世代のマーケティング活動においては、シニア世代の特性を理解したうえで戦略と戦術を立てていくべきと思います。
このコンテンツではシニア世代の時代背景なども含めて、シニアマーケティングのポイントを整理していますので、ご活用いただければ幸いです。
なぜシニア層を狙うのか?
世界的にマーケティング業界におけるターゲット層の話題といえば、「Z世代」や「ミレニアム世代」といった若年層の話題が多いのは、次代を担う世代として注目があるのは当然と思います。
特に経済発展が著しい地域では若年層の人口シェアが大きく、マーケティングを行う上でも重要なターゲットとなります。
しかし、日本においては「シニア世代」も大きな注目がある世代と言っても良いでしょう。
その理由は高齢化が世界一進んでいるからです。
上のグラフは、内閣府が発行している高齢社会白書に記載されているデータで各国のシニア世代の割合をグラフ化したものです。
日本の全人口における65歳以上の割合は28.6%。2位がイタリアで24.0%、3位がドイツで21.7%となり、日本は頭一つ飛びぬけています。
そのため、日本国内においてシニア世代をターゲットとして捉えていくことは、市場拡大のチャンスと考えるのは当然と言えます。
たとえ若年層向けの商品・サービスであっても、若年層マーケットの中では飽和状態や独占状態となった場合や、あるいは競合が多く参入しレッドオーシャン化した場合に、ぽっかりとあいているシニア世代をターゲットとすることで事業の拡大が見込めるかもしれません。
また、将来的視点で考えてみましょう。
現在のシニア世代のボリュームゾーンは「団塊世代」。ゆくゆくは、この団塊世代の子ども世代となる「団塊ジュニア」もボリュームの多い世代として控えています。その意味で考えると、現在のシニアマーケティングは、ゆくゆく来る団塊ジュニアマーケティングの前哨戦でもあると言えるのではないでしょうか。
たとえば、企業における商品やサービスの開発において、現在のシニアマーケティングでの経験の有無は、基礎研究やPDCAを回すベースとして活用し、将来の団塊ジュニアマーケティングに活かすことが考えられます。
そしてもうひとつ。
日本の高齢化が最も進んでいるということは、商品開発においてもシニアマーケティングにおいても先進国でもあるということです。この経験を活かして将来訪れるであろう海外事業における事業展開やシニアマーケティングの礎になることも考えられます。
シニアとデジタルメディアの関係
21世紀に入ってからメディアの潮流はデジタルの時代となり、現代の若年層にとっては当たり前のメディアです。またシニア世代にとってもデジタルメディアは当たり前になりつつあると思います。
でもシニア層が青春を謳歌していた時代には、デジタルメディアは勿論ありませんでした。
昭和の時代ではテレビ・ラジオ・新聞・雑誌のマスメディアの影響は非常に大きく、特にテレビは、ドラマやお笑い番組から多くの流行を生み出して時代の中心のメディアでした。
そのためシニア世代は様々なメディア接触を経てからデジタル時代に入っており、アナログなメディアから現代のデジタルメディアまで幅広く接している世代であることが特徴です。
多くのシニア世代にとっては、テレビは毎日観ているメディアですし、新聞も毎日目を通しているメディアです。新聞があるということは折込チラシも目に触れます。
こういった生活が習慣化されているため、シニア層にとってのデジタルは「one of them(多くのメディアの中のひとつ)」とも言え、少し前までは必要性をあまり感じていないシニア世代もいました。
デジタルシニア2.0時代
そんなシニア世代であっても、デジタル化の波に乗り始めており、徐々にデジタル中心の情報入手に移行していくのは間違いないでしょう。パソコンでインターネットに接したり、長年使っていた携帯電話をスマホに変えたり、デジタル社会に向けて、シニア世代の生活もデジタルが浸透しています。
下のグラフは総務庁の通信利用動向調査のデータを基に、「毎日インターネットを使っている」割合を、年代別に比較してみたものです。
各世代で上昇していますが、特に60代と70代の利用率の上昇が大きいことが解ります。
20代から40代までは、元々80%を超える利用率であるため、伸びしろが少ないこともありますが、60代と70代では20%前後の上昇となっています。
2020年だと毎日インターネットを利用する人が、60代:77.4%、70代:57.5%となり、およそ三人に二人が毎日インターネットに接していることになり、シニア世代にもデジタル活用が日常になってきているといえます。
そんなシニア世代のインターネット利用を後押ししたのは、コロナ禍による生活の変化を強いられたことが大きな要因と考えられます。
下のグラフは総務省の家計消費状況調査のネットショッピング支出金額のデータを加工したものです。
ネットショッピング支出金額については、どの年代においても年々上昇しています。食品・衣料・家電など、今やインターネットで買えないものはないのでは?と思えるほど充実しています。
特に若年層の方がより高い支出金額となっており、70歳以上と比較し3倍近い差となります。
ところが下のグラフで示している通り、増減率でみるとコロナ禍となった2020年から、シニア世代の増減率が急激に上昇していることに気付きます。
緊急事態宣言発令により外出が制限され、今まで普通に行っていた買い物もままなりません。
また、新型コロナウイルスは特にシニア世代に深刻な健康影響を及ぼすとあって、若年層以上に警戒心が強く働いていたことも要因と考えられます。
そのような環境の変化から、2020年にネットショッピングの必然性をより感じた世代がシニア世代だと思います。
増減率は2021年も上昇を続けており、継続してネットショッピングを利用しています。コロナ禍という外的要因で始めたネットショッピングだが、「時間的余裕、天候に左右されない、身体的にラク」といった利便性を体験し、手放せないものと感じているではないでしょうか。
コロナ禍を過ごしたシニア世代は、これまで以上にデジタルとの接点が加速度的に高まると考えられ「シニアデジタル2.0」世代といえるでしょう。
皆さんのこれまでのマーケティングにおいて、「シニア世代はなかなかデジタルに移行しない」「一度使っても続かない」といった課題を抱えるケースも少なくないと思いますが、この事例を参考とすると(コロナ禍ほどの理由は多くはありませんが)、商品・サービスの必然性を念頭に置いた行動喚起策や、手放せない利便性とはどんなものなのかを考えてみると今後のマーケティングのヒントになるかもしれません。
いかがでしたでしょうか。もし当社にご相談頂ければ、シニアマーケティングにおける商品開発支援からブランディングやマーケティング支援まで幅広く対応することが可能です。
お気軽にお声がけいただければ幸いです。
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著者プロフィール
プロフェッショナルズプランニング・ディレクター桐山 忠介(きりやま ただすけ)
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