サステナビリティ
地域創生
業種別事例
2023.01.13
北米から新潟県妙高高原に移住したライアン・ドナルド・マークさんのスノーキャットツアー
「サンダーバード・キャットツアー」という独創的なサステナブル・ツーリズム
豪雪地帯として知られる新潟県妙高高原で、独創的なキャットツアーサービスをスタートさせたライアン・ドナルド・マークさん。ライアンさんは、今からおよそ8年前に妙高高原のパウダースノーに惹かれて北米から移り住んできた。そんな彼が始めた事業が観光資源を再利用して磨き上げた「サンダーバード・キャットツアー妙高」というユニークなサステナブル・ツーリズムである。豪雪地ならではの妙高高原の上質なパウダースノー環境の利点を最大限に活かしながら、かつての観光資源の再利用に着目したツアー事業で、今現在、妙高高原のパウダースノーを楽しむコアなスキーヤー・スノーボーダーのインサイトやスノーアクティビティをやらない観光客のニーズにも沿ったプランも用意して、ターゲット毎に魅力的なスノーツアーに仕立てなおして、新しい価値を見出してデビューさせたものだ。私は、ライアンさんの熱意と少し強引でポジティブな人間性、更にスノースポーツへの価値観に惹かれ、このプロジェクトのマネージャーとしてライアンさんに寄り添いながら本事業の支援に携わった。
ユーザー志向や目的毎に開発した3つのツアープラン
「サンダーバード・キャットツアー妙高」は、ユーザーの志向や目的に応じて、3つのツアープランが用意されている。まずポイントは、全てのプランに共通してオレンジ色のアイコン的な雪上車を利用したスノーツアーであり、その雪上車は、新潟県大原製鉄所のクラシックな車両を整備して再利用しているのである。
一つ目のツアーは、「妙高パノラマスノーツアー」。かつてスキー場として繁栄した旧妙高パノラマパークスキー場跡地を再整備したツアーで、最大の魅力は妙高高原エリア全域の大パノラマを目の前に、プライベートにノートラックの急斜面を雪上車に乗って繰り返し滑って楽しむことができるツアーである。妙高のスキーの歴史と文化に触れながら、旧ゲレンデをプライベートに滑ることが出来るプランで、バックカントリースキー初心者からとにかくパウダーを滑って回したいユーザーに向けたツアーである。
二つ目は、厳冬期には辿りつくことが出来なかった「笹ヶ峰高原エリアでの本格的なバックカントリースノーツアー」。早朝から雪上車でアクセスして、妙高のより深い山域を限られた者だけが滑れるプレミアム感ある充実したツアーである。笹ヶ峰高原エリアでのスキーツアーは、ゲートが開通する4月後半から春先のバックカントリーツアーが定番であるが、あえて厳冬期にこのエリアの山域に入り、魅力的な斜面をハイクして滑る希少なツアー内容となっている。リフトアクセスする普段の妙高エリアのスノーツアールートと一味違った斜面を滑りたいユーザーや、より妙高の奥深い山域へ冒険心を掻き立てられる滑り手たちをターゲットとしたコア層向けツアーである。
三つ目は、広大な笹ヶ峰高原に大型のドーム型テントを設営して、厳冬期にテントで宿泊しながらバックカントリーを滑り尽くす「ベースキャンプでの滞在型ツアー」。ベース基地に滞在して、早朝から日没までその日の斜面と向き合い複数日に渡ってバックカントリーを滑れるスペシャル・ツアーで、下山後はドーム型テントで暖を取り、時間を共にした仲間とその日を振り返りながら飲食するひと時が最大の魅力。バックカントリー・エキスパートユーザーには勿論だが、滑りはせずに食事やスノーキャンプそのものを楽しみたいユーザーにとっても魅力的なツアーなのである。
これら三つのツアーは、ライアンさんを中心にプロジェクトメンバーで意見を出し合ってプランニングされたものである。妙高高原を訪れるスキーヤー・スノーボーダーの志向やニーズを研究し、ガイドや専門メディア等を招聘してファムトリップやテストマーケティングを各ツアー毎にターゲットを変えて実施。そこで得られたアンケート調査データの考察と、有識者の意見を取り入れて熟考して練り上げたプランなのである。何よりも、北米出身のライアンさんが、日本人以上に日本の、妙高のスノー文化に向き合ったからこそ生み出されたツアー企画であり、そういったライアンさんの心意気とパッションに共鳴したメンバーが、最後まで協力して開発したプランでもある。事業者目線でツアーコンテンツの開発に一から携わることが出来たことは、私個人にとっても印象深く、またマーケティングに携わる者としての経験としても本質的で貴重であった。
コロナ禍を経て、インバウンドを迎えることができるシーズンへ
このプロジェクトの実施にあたって、2021年国土交通省管轄の観光庁が公募する補助金を活用した。「誘客多角化などのための魅力的な滞在コンテンツ」造成実証事業に企画立案して申請し、採択された事業である。有志で集まったプロジェクト・メンバーが中心となって、山岳ガイド、自治体、観光局、専門媒体、有識者などの関係人口を派生させ、綿密に計画してツアー実施に向けて取り組んできた。ファムトリップ、テストマーケティングを繰り返し行って、アンケート調査から得られたデータを考察し、実際のツアーコンテンツへとフィードバックした。2022年1月からの実装に向けて準備してきたが、新型コロナウイルスの影響によってインバウンドは途絶え、国内におけるスノーキャットツアーの集客活動も苦戦を強いられた。
2022-2023シーズンにおいては、世界各国のコロナ情勢も変わりつつあり、円安等も影響して世界における日本への観光需要や観光コンテンツへの感心は高く、インバウンド復活の兆しを予感させる。今シーズンこそ、ライアンさんが魂を込めて創出した独創的なスノーキャットツアーサービスに一人でも多くのユーザーが体験し、豪雪地ならではの新潟県妙高高原の魅力を存分に楽しんで頂きたい。
専門メディア「STEEP」を招聘して実施したテストツアーの体験レポート
出典:STEEP「妙高高原で新しく始まるスノーキャットツアーサービスを、いち早く体験してみた」(2021.03.05)(https://steep.jp/mountain/28658/)
マウンテンハードウェア契約アスリートを招聘して実施したテストツアーの様子
出典:with outdoor by Columbia sportswear「クラシックな雪上車で行く!新感覚の妙高スノーキャットツアーの魅力とは? 〜プロスノーボーダー&登山ガイドの水間大輔さんに聞く〜」(2021.11.17)(https://withoutdoor.jp/mizumadaisuke-snow-cat/)
Thunderbird Cat Tour Myoko
https://thunderbird-guides.com/
問い合わせ
myoko.thunderbird.guides@gmail.com
Movie
Thunderbird Cat Tour at Panorama, Myoko
https://vimeo.com/517947102
Thunderbird Cat Tour in Sasagamine, Myoko
https://vimeo.com/517953297
Photo: Joe Kobashi
Movie : Ebis Films
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著者プロフィール
プロフェッショナルズ営業第6局1部 グループリーダー齊藤 雅之(さいとう まさゆき)
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