ブランディング パーパス ウェルビーイング 経営 2023.04.14
パーパスの設定・浸透で業績も変わる? パーパスがインナーブランディングに与える効果を調査から分析

目次
パーパスブランディングのインナー効果
業界別パーパス浸透率ランキング
パーパス設定と企業業績の関係
パーパス浸透深度と継続成果率企業業績の関係
社内浸透の成果が出やすいタッチポイント
これからパーパスブランディングを始める方へ

パーパスブランディングのインナー効果

 この記事は、パーパスに関するナレッジコンテンツ
パーパスブランディングとは? 必要性とメリットを実務家が解説
の続編として「パーパスブランディングのインナー効果」に関する示唆をまとめたものです。

 前回の振り返りになりますが、パーパスブランディングについては下記の通り定義付けました。

  1. パーパスとは「社会に提供したい喜び・嬉しさ」
  2. パーパスブランディングとは、「パーパスをもとに、独自の役割(=概念)を築き『できるだけ多くの人に』『できるだけ強い』感情移入を促す取り組み」

言うまでもなくブランディングには顧客、株主といった外部のステークホルダーに向けたアウター効果と、従業員や内部のステークホルダーに向けたインナー効果の両面へのアプローチで実践する必要があります。

パーパスをもとに取り組むパーパスブランディングで期待できるインナー効果の例として、

  1. 従業員各人がパーパスを理解して行動する
  2. パーパスを設定している企業に所属することがより良い社会を実現するという使命に誇り、やりがいを感じる。
  3. 各人のやりがい、目的意識によって商品やサービスの価値向上が促進される。
  4. 同じパーパスを共有した従業員が仲間意識を持つことで、働きやすい環境になる。
  5. 離職の防止になる。

などが挙げられます。

 さらに、このようなインナー効果によって、社外にも「社会に喜び・嬉しさを提供している企業」と認識されます。理念やビジョンにとどまらない、社会に対する企業の存在価値・ポジションは顧客、株主といった外部の人々の感情に働きかけ、感情移入をもたらします。
分かりやすく言えば、
「このブランドを購入・利用することは、より良い社会の実現につながっている」
「このブランドを推奨・応援することは、より良い社会の実現につながっている」
という認識を創り上げ「その企業・ブランドを使い続けること」に対して、誇りや自尊感情(自己肯定感)を生み出していくのです。

 パーパスブランディングのインナー効果、それによるアウター効果が見込めるとして、実際に取り組んでいる企業は社会全体で見るとまだ少なく、新しい考え方になります。新しい取り組みに労力をかけるか判断するに当たっては、企業の売上や利益につながるかどうかも重要な判断要素となるでしょう。
パーパスを設定し、社内に浸透させることが企業の業績にもつながるのかを明らかにするため、今回朝日広告社は2022年に『ASAKOインナーパーパススコア™調査』※1)を実施いたしました。この記事では国内55業界に従事する20~59歳のビジネスパーソン6,613名の回答結果から出てきたファインディングスを一部ご紹介いたします。

  1. パーパス設定率が高い業界の1位は「薬剤・医薬品業界」、2位は「証券・先物業界」、3位は「日用品業界」。
  2. パーパスを設定している企業は、設定していない企業よりも「売上高」「売上総利益率」「営業利益率」いずれの業績も上向き傾向にある。
  3. 継続的な成果を生むには、「理解・納得されるパーパス」を越えて「共鳴されるパーパス」を規定することが重要である。
  4. 継続的な成果を生んでいる企業が取り組んでいる社内浸透タッチポイントは「経営トップからの説明」「自社のホームページ」「ワークショップ・セミナーなどの研修」「社内の配布物」「社内イントラのトップページ」「社内向けの動画配信」など。

 なお、パーパスの設定、浸透、アクションの度合いについては各業界およびその会社における割合をASAKO独自の指標「インナーパーパススコア™」を用いて比較・分析しています。

業界別パーパス浸透率ランキング

 今回の調査で「あなたが所属する会社では「パーパス」は規定されていますか?」という設問に対しては「パーパス」が規定されている:12.7%にとどまり、「パーパス」とは呼んではいないが「パーパス」に類するものが規定されている:23.2%、この2つを合わせてパーパス浸透率は35.9%。一方で、わからない:40.9%とあることから、パーパスを規定したものの、現場の従業員まで浸透していない可能性も想定されます。

 その中でも、パーパスが浸透している企業が多い業界はどういった業界か、ランキング形式で見てみます。
パーパス浸透率=「自社でパーパスが規定されていると認識している人の割合」として、パーパス浸透率が高い業界を上位から並べました。

 パーパス設定率の1位は「薬剤・医薬品業界」、2位は「証券・先物業界」、3位は「日用品業界」となっており、人々の健康や財産、生活に大きな影響を与える業界が上位にランキングされていることが分かります。

パーパス設定と企業業績の関係

 パーパスブランディングの業績への影響を見るに当たり、まずはパーパスを「設定」することは企業の業績にもつながるのか関係性を見てみます。

 パーパス浸透と過去3年間の業績傾向との関係を見ると、パーパスが浸透している企業は、浸透していない企業と比べて「売上高:約1.9倍」、「売上総利益率:約1.8倍」、「営業利益率:約2.1倍」高い傾向が見られました。

パーパス浸透深度と継続成果率企業業績の関係

 次に、パーパスを社内に「浸透」させることは継続した成果につながるのか、関係性を見てみます。

 「継続的な成果を生んでいる」という回答を継続成果率としたとき、パーパス浸透深度が「パーパスに対する共鳴」に至ると、平均よりも11.3%継続成果率が高くなりました。
パーパスを規定する際には「理解・納得されるパーパス」を越えて「共鳴されるパーパス」を規定することが重要です。

社内浸透の成果が出やすいタッチポイント

 パーパスを設定し社内に浸透させることが、業績にも良い影響をもたらすことをここまで示してきました。パーパスを設定しただけで終わらず、社内に浸透させるにはどのような手法を取るのが良いのでしょうか。
 パーパスを社内浸透させる上で、パーパス継続成果率が高い企業は、以下のようなタッチポイントを活用しています。

 特に影響力があるタッチポイントは「経営トップからの説明」「自社のホームページ」「ワークショップ・セミナーなどの研修」「社内の配布物」「社内イントラのトップページ」「社内向けの動画配信」などが重要であることがわかります。

ここまで実際の企業の数値を見ることで、パーパスを規定・浸透させることによるインナー効果をご理解いただけたかと思います。次回は、インナー効果をもたらすパーパスに必要な要素、従業員の誇りにつながる要素を分析した結果をご紹介します。

これからパーパスブランディングを始める方へ

 パーパスブランディングを検討するに当たって、

  1. そもそも何から手を付けて、どのように進めていいかが分からない
  2. どのような論点を検討すればいいかが分からない
  3. 社内だけでは視野が狭くなるので、外部の専門家の視点や意見が欲しい
  4. パーパス設定やインナーブランディングで終わらせず、広告やホームページリニューアル、PRなどのアウターブランディング施策までワンストップで支援してほしい

 などの課題・要望がありましたら、ぜひお気軽に当社までご相談ください。

 パーパスブランディングは、今後の貴社ブランドの「在り方」を決定付ける、極めて重要な取り組みです。
 「さあ!パーパスを考えよう!」という機運が生じても「パッ」と思い浮かぶものでもなく組織の「認識」や「足並み」をそろえるのも、簡単なことではありません。
 もし当社にご相談いただければ、パーパスブランディングに関するフレームワークや始め方・進め方、事例などを紹介いたしますので、お気軽にお声がけください。

今回ご紹介した調査の詳細結果に関しては、朝日広告社コーポレートサイト内「ASAKOが解決できること」から無償でダウンロードして頂けます。

ソリューション資料のダウンロードはこちら

調査タイトル:パーパスに関する調査
調査手法:インターネット
調査期間:2022年11月11日~2022年11月22日
対象者条件:
・20~59歳男女
・会社員・経営者・役員の方
・200人以上の規模の企業にお勤めの方
回答数:下記55業界計6,613
【一次産業】水産・農林 76、その他一次産業 47
【消費財メーカー】食品・飲料 132、パルプ・紙 103、化学・化学品・化粧品 137、薬剤・医薬品 103、電気機器 194、輸送用機器 164、情報通信機器 103、日用品 103、
【生産財メーカー】プラスチック製品 103、鉄鋼・非鉄 121、金属製品 103、機械器具 108、精密機器 165
【卸・商社】総合商社 201、食料・飲料卸 103、電気機器卸 103
【小売り】百貨店 103、スーパー・コンビニ 205、衣服・履物小売 169、食料・飲料小売103、家電・電気機器小売 103、医薬品・化粧品小売 103、ホームセンター 78
【金融】銀行・信託 180、クレジット 103、証券・先物 103、保険 178
【建設・不動産】建設 150、ゼネコン 103、不動産 114
【輸送・物流】鉄道 103、道路輸送 109、倉庫 103、郵便・運輸サービス 148
【飲食】飲食店 103
【レジャー】旅行 103、娯楽 103、宿泊所・ホテル 125
【生活インフラ】通信 108、電気・ガス・水道 103
【マスコミ】放送 85、出版・印刷 156
【IT】SIer 103、情報サービス 135、ソフトウェア 127
【医療・福祉】病院・医療 151、老人福祉・介護 103
【教育】教育支援業 119、学校 103
【その他】理容・美容 87、清掃業 103、クリーニング業 58、自動車修理・補修業 211

  1. 所属等は執筆当時のもので、現在とは異なる場合があります。
  2. また記事中の技術、手法等については、今後の技術の進展、外部環境の変化等によっては、実情と合致しない場合があります。
  3. 各記事における最新の動向につきましては、当社までぜひお問い合わせください。

著者プロフィール

プロフェッショナルズストラテジックプランンナー村田 理紗(むらた りさ)

この人の書いた記事

得意領域

  • #ブランディング
  • #マーケティングリサーチ
  • #マーケティング戦略
  • #市場調査
  • #事業戦略

【転載・引用について】

本記事・調査の著作権は、株式会社朝日広告社が保有します。
転載・引用の際は出典を明記ください 。
「出典:朝日広告社「アスノミカタ」●年●月●日公開記事」

※転載・引用に際し、以下の行為を禁止いたします。

  1. 内容の一部または全部の改変
  2. 内容の一部または全部の販売・出版
  3. 公序良俗に反する利用や違法行為につながる利用
PAGE TOP