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2023.08.28
新しいつながりを考える「周囲との関わり」15の視点 ~第2回ウェルビーイング調査より④~
- 目次
- 「周囲との関わり」におけるウェルビーイング指標とは
- 【地域・社会】…つながる高齢層とつながらない若年層
- 【他者】…相談できる人がいない男性
- 【家族】…悩みはありながらも、おおむね良好な家族関係
- これからの日本に必要な「地域・社会」「他者」とのつながり
「周囲との関わり」におけるウェルビーイング指標とは
朝日広告社では「“一人ひとりのよりよく生きる”を考える」をテーマにサステナラボ®を立ち上げ、さまざまな分野における調査や研究、社会課題の解決に向けた取り組みを行っております。その一環として、ASAKO独自の「60のウェルビーイング指標™」を開発し、2021年11月に第1回、そして2022年11月に第2回ウェルビーイング調査を実施いたしました。「60のウェルビーイング指標™」の概要については、アスノミカタ「ウェルビーイング・マーケティングを具体化する“よりよく生きる”を考える60の視点」の記事をご覧ください。
今回の記事では、「周囲との関わり」の領域について指標の詳細や第2回ウェルビーイング調査の内容について紹介します。「60のウェルビーイング指標™」の4領域の一つ「周囲との関わり」は、「地域・社会」「他者」「家族」の3分野で構成されています。さらに、各分野に5つずつの分析要素があることで、合計15の指標で、ウェルビーイングにおける「周囲との関わり」領域に関する状態を調査・分析することができるようになっています(図表1)。以下で、「地域・社会」「他者」「家族」の分野について、調査結果を見ていきましょう。
図表1)「周囲との関わり」に関する15のウェルビーイング指標
参考:「ウェルビーイング・マーケティングを具体化する“よりよく生きる”を考える60の 視点」(2023.04.27)
(https://www.asakonet.co.jp/asunomikata/contents/798/0427_yokoo_2/)
【地域・社会】…つながる高齢層とつながらない若年層
図表2)「地域・社会」の充足度(性年代別 n=2,800)
図表2は「地域・社会」に関する5つの指標について「非常に当てはまる」「やや当てはまる」の2項目合計を男女別にグラフ化したものです。全体では、5つの指標のうち「近所に顔見知りの人がいる」「近所づきあいで問題がない」の2指標が、他の指標と比較すると男女とも50%以上で高い傾向が見られました。一方「ボランティア活動をしている」「町内会など、地域に関わる活動をしている」といった一歩踏み込んだ活動は、男女とも10~20%台と低さが目立つ結果となりました。次に、性年代別では男性の70・80代、女性の60~80代は全体的に高い傾向でしたが、20・30代の男女とも低く、地域や社会とつながりの弱さがうかがえました。「地域・社会」分野では、全体的に世代間格差があることが分かります。世代における格差は、ライフステージによる利害や、可処分時間などの違いによるところが大きいかもしれませんが、住む町やそこに住む人たちとの関わりの低下は、この先の日本のより一層の「孤独」の問題につながっていくのではないかと懸念されます。
【他者】…相談できる人がいない男性
図表3)「他者」の充足度(性年代別 n=2,800)
図表3では、「他者」に関する5つの指標について見ていきましょう。5つの指標の中で、最も充足度が低かった指標は「職場や家庭以外に所属している集団がある」となりました。男女とも充足度が約30%。逆に言うと、約7割の人は、職場や家庭以外に属している居場所がない、という状況です。また、男女別で見てみると「友人がいる」「家庭以外で普段接している人との関係は良好である」「身近に気軽に話せる人がいる」「困った時に相談できる人がいる」の4指標で、女性のほうが男性に比べて10ポイント以上も充足度が高い結果でした。「他者」に関わるウェルビーイングについて、男性の充足度が低い傾向になり、考慮すべき問題が多いと言えそうです。続いて、性年代別でも見てみましょう。男性は30~50代、女性は40・50代が低く、男性80代、女性70代の他、男性20代の充足度が高い傾向があります。「自分自身」分野の記事にも40・50代を中心とするミドルエイジの危機について触れましたが、「他者」との関わりについても、この世代の充足度の低さは課題と言えそうです。
参考:『「自分自身」を見つめる15の視点 ~第2回ウェルビーイング調査より③~』(2023.08.21),
(https://www.asakonet.co.jp/asunomikata/contents/975/230820_yokoo3/)
【家族】…悩みはありながらも、おおむね良好な家族関係
図表4)「家族」の充足度(性年代別 n=2,800)
図表4は、「家族」に関する設問です。5つの指標の中で、充足度が最も高かった指標は「家族との関係は良好である」です。男女とも60%後半の数値となっています。続いて、充足度が最も低い指標は「家族内で悩みや揉め事が無い」で、40%台の数値となりました。家族との関係は良好でありながらも、何らかの悩みは抱えている、少し矛盾した状況がうかがえます。さらに、全体的に性年代別で見てみると、男性の40・50代、女性の50代で充足度が低い傾向が見られました。「家族」の分野においても、ミドルエイジは課題が多いようです。また特徴的な結果として、「家庭内で悩みや揉め事が無い」の指標について、女性30代が33.5%と充足度がかなり低くなっていました。厚生労働省の調べによると、第1子出生時の母の平均年齢は30.9歳となっており、何らかの関連性があるのかもしれません。
出典:
厚生労働省「令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況」
(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai21/index.html)
これからの日本に必要な「地域・社会」「他者」とのつながり
「60のウェルビーイング指標™」の4領域の一つ「周囲との関わり」における「地域・社会」「他者」「家族」について各分野の調査結果を見てきました。まず、大きな特徴として「地域・社会」に関する充足度が、他の2分野に比べてかなり低い傾向が見られました。「ボランティア活動をしている」「町内会など、地域に関わる活動をしている」の2指標の数値が特に低く、「地域・社会」への積極的な活動についてハードルが高い状況が見られます。また、3分野ともに共通して言えることは、70・80代の高齢層の充足度が高く、40・50代の中年層の充足度が低い傾向が見られます。「周囲との関わり」のウェルビーイングにおいても、全般的にミドルエイジが課題と捉えられそうです。最後に注目すべきポイントとして、「他者」分野での男女格差です。繰り返しになりますが、「友人がいる」「家庭以外で普段接している人との関係は良好である」「身近に気軽に話せる人がいる」「困った時に相談できる人がいる」の4指標で、女性のほうが男性に比べて10ポイント以上も充足度が高い結果となりました。男性の「他者」とのつながりの弱さが顕著に表れています。単身世帯が増加しており、今後も増えていくことが予想される中で、「地域・社会」や「他者」とのつながりにおける充足度の低さは、これからの日本社会において重要なウェルビーイング・イシューと考えられます。「家族」とは異なる、新しいつながりの形が求められているのではないのでしょうか。
出典:
厚生労働省「我が国の人口について 世帯構成の推移と見直し」
(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21481.html#:~:text=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E4%B8%96%E5%B8%AF%E6%A7%8B%E6%88%90%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6,%E7%82%B9%E3%81%AE%E4%B8%80%E3%81%A4%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82)
※今回ご紹介した「第2回ウェルビーイング調査(一部抜粋)」については、朝日広告社コーポレートサイト「ASAKOが解決できること」から無償でダウンロードしていただけます。
ASAKO「第 2 回ウェルビーイング調査」概要
- 調査目的:
①サステナブル分野における 20 のキーワードの認知・共感
②生活者の幸福度および、日常生活の様々な領域での充足度
について定量的(一部定性的)に把握するため - 調査名:
ウェルビーイングについての調査 - 調査手法:
インターネット調査 - 対象者:
20~80 代の男女、全国(性年代での均等割付) - サンプルサイズ:
2,800 - 調査実施日:
2022 年 11 月 21 日~2022 年 11 月 24 日 - 調査主体:
ASAKOサステナラボ®
- 所属等は執筆当時のもので、現在とは異なる場合があります。
- また記事中の技術、手法等については、今後の技術の進展、外部環境の変化等によっては、実情と合致しない場合があります。
- 各記事における最新の動向につきましては、当社までぜひお問い合わせください。
著者プロフィール
プロフェッショナルズプランニング・ディレクター横尾 輝彦(よこお てるひこ)
この人の書いた記事
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- #ウェルビーイング
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